【絵磨】
「ぎゃあああああっ!!!!
な、何を、何を考えてるんですかあああっ!!」

【才人】
「くぉらああっ! 暴れんな!! 落ちるだろうが!!!」

【巳紀】
「おお、出てきた……って! 何をしているんだ才人!!」

【取り巻き】
「あれって一応、お姫様抱っこ……になるわけ?」

【スミレ】
「新條……」

【巳紀】
「才人! それは僕の役割だろう!
だいたい君の身長で彼女を抱えるのは無理があるぞ!!」

【才人】
「う、うるせえ! 俺も好きこのんでやってるわけじゃねーよ!」

【絵磨】
「お、お姫様抱っこ……」

別に憧れてたわけじゃないけど……
私のような背が高い女には、縁がないものだと思っていた……。

そう考えたら、なんか急に恥ずかしく……。

【才人】
「おお? なんだ、なに急におとなしくなってんだ。
まさか、本気でお姫様気分になってきたか?」

【絵磨】
「ち、違います……」

【才人】
「なんだったら、あいつらにも見せつけてやるか?」

【絵磨】
「え……?」

【男子生徒A】
「新條が抱えてるの、なんだあれ……」

【男子生徒B】
「知ってるよ、例のデカ女だ。あの二人、付き合ってたのか?!」

【絵磨】
「う、う……うあああ!!」

よ、よく見たら周りに結構人が……!
しかも、みんなこっちを見てるし、私……めちゃくちゃ目立ってる!?

【絵磨】
「い、いやです……みんな見てるじゃないですかあ!
お、おろしてください……っ!」

【才人】
「うおおお! だから、暴れるな!
落ちて腰でも打ったらどうするんだよ!」

【絵磨】
「うえええええええ。わ、私、どうしてこんなことにぃ……」

【才人】
「お、おい……」

【絵磨】
「透明なまま卒業まで過ごすつもりだったのにぃ……。
こんなの、こんなの全部おしまいじゃないですかぁ……」

【才人】
「だめだな、こりゃ。人の話聞ける状態じゃないぞ……。
おい、巳紀! 見てねえで、おまえも手伝え!!」

【巳紀】
「ああ、いいとも!
君だけにそのような名誉を与えるわけにはいかない!」

【絵磨】
「ひあああっ!?!」

【男子生徒A】
「ま、まさかのダブル姫抱っこ!?」

【男子生徒B】
「いや、あれはもはやお姫様抱っこというより……
病人の搬送のような……」

【男子生徒A】
「ああ。出棺にも見えるな」

【絵磨】
「や、やめてください……ス、スカートが……
パンツ見えちゃうじゃないですかー」

【才人】
「今さら気にするな。俺らにはもう何度も見せてるだろ」

【巳紀】
「ああ。僕は決して邪な気持ちなど抱かない」

【絵磨】
「そ、そういう問題じゃないですっ!」

【取り巻き】
「マジでそういう仲なんだ……」

【スミレ】
「もうやだ……なんなの、これ……。こんなの、見たくない……」

【才人】
「よし、巳紀。このまま外まで運ぶぞ」

【巳紀】
「エマ、帰ろう! 僕たちのいるべき場所へ!」

【才人】
「ほれ、わっしょい! わっしょい!」

【絵磨】
「私は神輿じゃありませんよ……
っていうか、どこに連れて行く気ですか。
また強引に巳紀さんの自宅へ連れ込むつもりですか!?」

【巳紀】
「というか、僕の家以外に行くところが思い当たらない」

【絵磨】
「や、やっぱり……
どうせまた、わいせつな服を着せる気なんですね!」

【男子生徒A】
「あいつらコスチュームプレイが好きなんだ……」

【男子生徒B】
「あれに一体、何着せる気なんだ……」

【絵磨】
「うああああああ……。
なんか、すごい既成事実が出来上がってますよぉ……」

【才人】
「流布したのはおまえだろ……」

【絵磨】
「う、うう、うううう……もうやだーーーーーーっ!」

【才人】
「だ、だから暴れるなって!!」

【巳紀】
「う、おおおお! エマ……そ、それ以上は……ぬあああ!」

【才人】
「いたっ!! ドサクサに紛れて殴りやがったなコラ!」

こんなのこれ以上耐えられない。

なんで私が? なんでこんな目に遭うの?

絶対にもう嫌だ、嫌だ……!

【絵磨】
「やだああ……もう、やなんですからーーーー!!」

【巳紀】
「やめて!!! それ以上いけない……のわっ!?」

ドサッ!

【絵磨】
「ぬがあああああああああああああ!」

【才人】
「し、しまった……逃げられた……」

【巳紀】
「ああ……待ってくれ、僕のミューズ!
悪かった、土下座でもなんでもする!
僕の頭を踏んでくれてもいい! というか踏んでくれ!!」

【才人】
「おまえ……この俺から逃げられるなんて思うなよ!!
地の果てまでも追いかけてやるからな!!!!」

【スミレ】
「……だから、あの娘がなんだっていうのよ」