【セリム】
「さっき。どうして僕にした?」
【アレクシア】
「…………」
【セリム】
「確かに僕は普段こんなところには来ないけど。
理由までは知らなかったのかな。
頭を働かせたようだけど残念だったね」
【アレクシア】
「残念とは……どういった意味でしょう」
【セリム】
「君の選んだ方はハズレってこと。
僕は玉座からは遠い人間だからね。少なくともアスランよりは」
【アレクシア】
「……陛下は、そのような基準で選ばせたと?」
【セリム】
「さあ。ただ、多少煽ってやりたかったんじゃないか。
アスランにも慢心されたら困るだろうし」
【セリム】
「それと、僕にはもっと世慣れておけと言いたかったのかも」
【アレクシア】
「慣れていないようには、見えませんが」
【セリム】
「そんなことないさ。表に出るのなんて本当に久しぶりだ。
こんな風に外の人と話すのもね」
【セリム】
「まあ、父上のことは嫌わずにいて差し上げてくれ。
あの人にも悪気はないはずだから。多分」
【アレクシア】
「それは……」
【アレクシア】
「…………」
ディートリヒの見識を頼るより先に、
この国の皇帝について少しばかり知ることができた。先の一件で。
そして、この皇子の言う「表」や「外」が
どのような意味を持つのかも少し気になった。
けれども、それを尋ねるには相手との距離が遠すぎる。
体はこれほど近くにありながら、
彼がそこまで気を許しているとは思えない。
恐らく、相手は誰でもいいのだろう。
この人には見知らぬ人と接すること自体が珍しく楽しいのだ。
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