視界のすべてが、その体に塞がれる。
両腕が背中に回され、
目の前の体に押しつけられて身動きができない。
【エリ】
「アスラン……?」
こんな風にされるのは初めてだった。
胸と胸が触れ合い、隙間もないほど密着している。
正面から抱き合うと、エリの頭は胸の辺りまでしか届かない。
体は一回りも二回りも大きくて、
子供の頃、ふざけてクリストフに抱きついた時のようだ。
アスランの背の高さ、体の大きさ、
目で見て知っていたはずのことを全身で感じさせられる。
【エリ】
「どうしたの。なにかあった?」
背中を支えるようにそっと触れてみると、
昨晩、同じように抱きついた時の記憶がよみがえる。
胸がざわつき、深く息を吐き出した。
アスランを受け入れ、いまだ癒えない体の奥の痛みが
思い出したように疼きはじめる。
【アスラン】
「エリ……」
【エリ】
「……っ」
背中に回った腕に力がこもる。
胸が押し潰されるほど強く、痛いほどだった。
【エリ】
「……アスラン、苦しい」
訴えても、離してもらえない。
腕はわずかに緩んだように思えたが、
代わりにエリの背や腰を何度も撫で下ろす。
無言でいながら、触れる手はやはり言葉より正直だった。
離さない、というようにエリを閉じこめ、
懇願するように撫でてくる。
【エリ】
「……どこにも、行かないから」
【エリ】
「ここにいるから……大丈夫」
※素材はいずれも開発中のものとなります。