『グラン・オダリスク』とはどんな作品でしょうか? 作品の雰囲気やテイストを聞かせてください。
【陣内】 とある東洋の後宮を舞台にした物語です。 主人公は、西欧の小国の王女と、親友の少女の2人。ダブル主人公です。 1,900年代初頭の西アジアをモデルにしており、 冒険小説風な部分も大きいですが、基本は日本の「乙女ゲーム」です。 主人公達の友情、そして彼女たちとは異なる生まれ、考え、価値観の人々との出会い、 その中で生まれる対立や恋愛、成長を描いています。 【加納】 ルートによっては少し込み入った要素もあるのですが、 基本的には人間ドラマにのみ注目して読み進めても楽しめるようになっているかと思います。
今作の制作するにあたってのきっかけや意図などがあれば聞かせてください。
【陣内】 加納高子さんから企画案を拝見して、歴史物としての魅力、 また、現代の人から見ても理解しやすいキャラクター造型が良いと思いました。 作品世界中の時代、日本は明治時代です。 この時代の西洋と東洋の文化や価値観に、 第三者的な視点で触れることができるのも面白いと考えました。 以前、制作した『ヴァルプルガの詩』でも、西洋と東洋の価値観の違いや 融合をテーマの一つにしたのですが、また違うアプローチが出来たと思います。 【加納】 ハレムという題材は女性向けの物語ではよく登場するものだと思うのですが、 作品の肝となるのは土地的な要素以上に「この時代」であることではないかと思っています。 「2人の女性主人公」「ハレム」「20世紀初頭」、この3つのキーワードが揃った時点で、 ようやく企画が形になったような気がします。
これまでのKalmia8というブランドの作品とは方向性が違うように見えるのですが、 同ブランドからのリリースとした理由はなんでしょうか?
【陣内】 Kalmia8作品は、手軽にプレイできる内容で、 攻略キャラクター2名の小~中規模ゲームという縛りを作っていたのですが、 徐々に作品規模が大きくなってきてしまっていたので……。今作で縛りを外しました。 本作は、手軽でもないですし、攻略キャラクターも多数ですが、 「他では作らないだろうゲーム」というところがKalmia8らしさだと思っています。
WindowsPC以外への移植や、日本語以外での展開は想定されていますか?
【陣内】 検討しています。 ただし日本国内のレーテイング上、現在ではPCゲームでしか表現・発売できないものを 多く含んでいますので、とある1ルートは完全に年齢制限版専用として制作しています。 Kalmia8作品は日本国外のユーザーさんも多いので、 作品紹介として英語ページを一部準備しましたが、ゲームのボリュームが大きいこともあり、 他言語への翻訳は未定です。まずはPC日本語版でお楽しみいただけたらと思います。
攻略キャラクターは何名ですか? また、エリとアレクシアで、攻略対象は重複するのでしょうか?
【陣内】 攻略キャラクターは4名で、基本的には重複しません。 エリルートの攻略対象が、アスランとディートリヒ。 アレクシアルートの攻略対象が、セリムとファルーク。 と2つに分かれています。 ただ展開によって、エリとアレクシアが、同じキャラクターと関係を結ぶことはあります。 【加納】 各ルートごとに「正規ハッピーエンド」と仮定しているエンドがあるのですが、 間違いなくここへ進んでいればクロスオーバーは発生しません。 基本的にそれ以外のエンドに相当するもののみ、という感じです。
本作品における性描写はどのようなものでしょうか?
【陣内】 日本のレーテイングで、18禁に分類されるものとなります。 全年齢版では、それらの性描写は全てカットされます。
端的に言うと、どのような物語でしょうか?
【陣内】 主人公達が、思いも寄らない苦難や冒険の中で、自分と向き合います。 価値観の違う人達とぶつかり、尊重し合い、融和し、 時には分かりあえないまま、前へ進んでいきます。 葛藤の中で見つけ出す自分自身、そして目的や、 望む幸せは、ルートやエンドによって少しずつ違っているかもしれません。 【加納】 これも企画の初期から意識していたポイントなのですが、 恋愛と目的が相克する物語にしたいと思っていました。 どちらかを取ればどちらかが成り立たない、といった感じです。 正規ハッピーエンドは各ルートごとにあるのですが、恐らくプレイされる方ごとに 好ましいエンドは異なるのではないかなと考えています。
エリとアレクシアについて、どのようなキャラか聞かせてください。
【陣内】 エリ……士官予備学校に通っていることなどから、アレクシアほど女性としての 自分を自覚しきれていないところがあります。 アレクシアを守りたいという意思を、誰よりも強く持っています。 アレクシア……小国の王女に生まれ、誰もが認める美貌を持ち、 更に聡明さも持ち合わせているのですが、どこか諦観に似たものを内面に持っています。 エリの存在を希望のように感じているところがあります。
「主人公が2人いる」というのが作品の大きな特徴であるように思えます。 どのような理由でそうしたのでしょうか?
【陣内】 舞台となる国家アナトリアにおいて、主人公は異邦人です。 似た年齢の西洋女性ではありますが、立場も考え方も違う2人を主人公とすることで 視点が替わり、世界設定を複層的に描くことができたかと思います。 また、主人公2人の友情と葛藤も、物語の重要な核になっています。 デメリットとしては、攻略キャラクターが重ならないよう物語を設定したため、 見たい組み合わせが見られないということもあるかも知れません。 【加納】 タイプの異なる2人の主人公を用意する、というのは自分の中でずっとやりたいと 思っていたことで、ハレムという題材と併せてこの企画の原点になっています。 女性向けゲームにおいては、攻略キャラクター以上に主人公の存在が プレイヤーが作品に入りこめるかどうかのポイントになると思うのですが、 自分自身の力量不足も併せて、1人の女性だけでは大きな物語を回しきれない難しさを 感じていました。 今回の2人の主人公は、その辺りをうまくカバーし合ってくれたのではないかと思っています。 また、攻略キャラクターが重ならない・見たい組み合わせが見られないというのは 確かにデメリットなのですが、これは攻略キャラクター側の個性もより際立たせることができる、 という点で、裏返せばメリットとも考えられるかもしれません。 すべてのシナリオを書き終えた今だからこそ言えますが、 例えばアスランはアレクシアを好きになることはなさそうだと感じますし、 ファルークとエリはどうあっても友人止まりだろうな、とも思います。 もちろん受け取りかた・楽しみかたはプレイしてくださる方の数だけあっていいと思うのですが、 「その人だからこそ、その相手だからこそ好きになったんだ」といった特別感を 味わっていただけるといいなと思います。
サブキャラクターが沢山いるようですが、 攻略キャラ以外の男性と関わる展開もあるのでしょうか? また、主人公2人のほかにも女性キャラクターは登場するのでしょうか?
【陣内】 あります。女性キャラクターも多数登場します。 【加納】 女性キャラクターを出すくらいなら、 その分イケメンの方がいい! というのもとてもよくわかるのですが……! ハレムという舞台を描く上では、主人公がただ一人の万能のヒロインではなく、 多くの中の1人でもある、という位置付けがある程度必要でした。 ただ、ルートや結末によっては「たくさんの中から選ばれる(のし上がる?)」という 優越感をリアルに味わっていただけるのではないかとも期待しています。
過激な表現や暴力描写などはあるでしょうか?
【陣内】 基本「なんでも大丈夫な人」向けです。 エリとアレクシアの二人の間の性描写、それと男性キャラクター同士のBL展開はありません。 【加納】 物語の性質として、痛みや怒り、理不尽が一切存在しない世界ではないと思います。 ただ、今回は過激な要素そのものを楽しませることを目的とした作品ではないため、 展開上必要なものとして、もしくは選択の結果にある代償としてそういうものもある、 といった具合かなと捉えています。
作品の独自性、もしくはセールスポイントを聞かせてください。
【陣内】 ものすごくボリュームが大きくなったので、 フルボイスではなくパートボイスになる見込みです。 ※フルボイスになりました!→詳細はインタビュー02へ 「エリ主人公パート」「アレクシア主人公パート」などの分割版などを考えていますが、 まずは、『グラン・オダリスク』の全てが楽しめる、全部入りのPC版を出します。 本当の本当に大ボリュームです。 【加納】 今作にはエンドが20個あるのですが、すべてスチル有りのものになる予定です。 プレイしてくださった誰もが「これが自分のために用意された結末だ」と思えるものを 1つでも見つけていただけるといいなと思います。
シナリオ制作はどのように行われていますか?
【加納】 ファルークのルートとそこからの分岐のみ一二階さんにご執筆いただいています。 ファルークのルートは他のキャラルートと比べてスリリングな展開が多く、 人物の動きも大きくドラマチックで、特に主人公の変化は見どころだと思います。 全編を通してのプロットやその他のシナリオは私が書いていて、 基本的に好きなことを好きなように書かせていただきましたが、 こちらからお声がけしたプロのシナリオライター複数名にチェックしていただいているので、 常軌を逸したものにはなっていないかと思います。もちろん陣内さんも全面的にフォローしてくれています。
プレイヤーの方へ一言お願いいたします。
【陣内】 物語の概要に興味を持っていただけた方に、楽しんでいただけるものになるよう 制作しておりますので、今しばらく完成までお待ちいただければと思います。 【加納】 これまで女性向け18禁PCゲームにこだわって開発を続けてこられたKalmiaさんだからこそ、 作らせていただくことのできた作品だと思います。 素晴らしいグラフィックや音楽、演出などにもご期待ください。